子どもたちに生きる力を!



「⼦どもの⾜は⼤⼈の⾜の単なる縮小版ではありません」

このフレーズが日本で公開されてから約30年になります。

子どもは、足だけではなく、からだの組織や機能が未完成な状態で生まれてきます。足には56個の骨があり、からだ全体の骨の約1/4の数を占めているのですが、それは直立二足歩行というヒトだけができる複雑な動きを可能にするためです。

生まれてから最初の約6年間は、骨と骨をつなぐ結合組織(筋肉や腱)は未熟で、骨には軟⾻部分が多くあり、関節もしっかりしていません。個人差はありますが、大人と同じ骨格になるのは14〜16歳ころまでかかります。その期間、筋肉の動きに応じてからだの関節可動域は最適化しながら成長します。まさに骨格は筋肉の作用によって形づくられていく、ともいえます。

例えば足。成長期に骨と筋肉の働きが妨げられることなく、機能が十分に発達していけば、健康で丈夫な足として完成するでしょう。

しかし、成人で健康な足を持っているのは約38%だという調査結果があります。⾜の問題の多くは⼤⼈になってから発症しますが、子ども時代の姿勢や運動がからだに、日常の履物と履き方の習慣が足の機能に、影響をおよぼし合っていることを考えると、足の健康と子ども時代の履物が無関係だとはいい切れないのです。

からだを支えている足の骨組みをしっかり築くために、軽くて柔らかい靴ではなく「骨格をしっかり支える機能性のある靴」を、からだを痛めない歩き方を身につけるためには「脱ぎ履きしやすい靴」ではなくて「脱げにくい靴」を、大人がきちんと選んであげてください。

ヒトが持つ精密なからだを傷めず長持ちさせる秘訣。それはからだの構造と機能が歪まされずに成長すること。からだの機能を最大限に活かせるためには、足が丈夫であることは欠かせません。機能性の高い靴は、子どもによい歩き方を教えてくれます。靴は足を入れるためだけのものではなく、命を運んでいるのです。

子どもたちにわたしたちが与えられる最大のプレゼント。
それは─────

どこまでも歩ける足を! そして生きる力を!

Ferse LLC CEO 伊藤笑子

伊藤笑子

*関節可動域とは:身体の各関節が、傷害などが起きないで生理的に運動することができる範囲(角度)のこと。
photographs 永井裕美 (hirominoco)